PCは大規模な集積回路(IC)の集合体によって構成されている。
この集積回路内部で電流の流れを制御することによって演算処理を行う。
電流が流れることにより演算が行われるが、その過程で熱が発生する。
その熱によりさまざまな電子部品・電子回路に悪影響を与えたり、PCの排気による室温の上昇並びに騒音等の影響が発生し人体にも影響を及ぼす。
そのため、発生する熱に対する効率的な冷却、つまり熱対策が重要となってくる。
熱によるPCへの影響
- CPUやGPUの熱による演算誤り(熱暴走)
- メモリの保持データ誤り及び熱によるメモリチップの劣化
- HDDの熱による故障
- マザーボードや電源に実装されているコンデンサーの劣化が早まる
- 電源回路のトランジスタが過熱することにより出力電圧が不安定になる。その結果突然のシャットダウンなどを引き起こす。
- 熱を排気するためにファンが高速で回転することによるファンの劣化及び故障。
- 熱により回路の電気抵抗値が上昇し、消費電力が増大する。
熱による人体及び周辺への影響
- ファンの回転が高速化することによる騒音の発生。
- 排気熱による室温の上昇
- 筐体(ケース)が温まることにより、人体が筐体に長時間触れていると低温やけどを起こすことがある。
- 熱により電気回路の抵抗値が上昇し、消費電力が増大した結果電気代が増加する。そして発電所からのCO2排出量が増加し環境破壊にもつながる。
これらの熱による影響を軽減させるためには冷却を施すことが重要である。
冷却をするために主に3つの対策方法あある。
1.環境の改善
2.ハードウェアの対策
3.ソフトウェアの対策
基本的に熱源に近い場所から対策した方が効果が上がる。(熱源はCPUやGPUなど)
パーツ→ケース→部屋→空気の流れ→空気の温度→空気の温度変化の順番で熱対策を検討する
効果大
↑CPUやGPUを消費電力の低いものに変える
|ヒートシンクやファンを交換
|PCケース内のエアフロー改善
|PCケース交換
|設置場所や配置を変える
|扇風機などを使う
|部屋の換気を良くする
|窓から直射日光が当たらないようにする
|窓にすだれなどを掛ける
|空気の入れ替えが行われやすい縁側などに移動する
↓住む場所を変える
効果小
PCの設置場所を変更したり、部屋の換気を良くしたりすることにより冷却を図る。
また、空調を動作させるという手もある。
空調設備を交換する際には熱容量計算を行うことをおすすめする。(通常のPCよりも発熱量が増えるので一般的な熱容量計算では冷却能力が不足するため)
PCを換気扇の近くに配置したり、空気の流れを考慮して設置位置を数十cm高くしたりすることで改善を図れる。
壁・障害物から数十センチ離すことにより空気の流れがよくなる。
利用しない時間はモニターの電源を切ることで消費電力の低減及び熱の発生を防げる。
最新の事例として、海外のデータセンターでは外気冷却を取り入れているところがあります。これを応用し物置に設置したりするという方法も考えられます。(ただしセキュリティや漏電に注意)
ハードウェアの対策 †[edit]
- CPUやGPUなどを消費電力の少ないものに交換する。
- 電源ユニットを電力効率の良いものに交換する。
- 使わないデバイスは取り外す。
- ヒートシンクを設置する。
- 空気の流れの良いケースに交換する。
- ファンを風量の大きいものに交換する。
- 水冷などを導入する。
最新の事例では、日本のスーパーコンピュータ「京」においてラックに搭載されたシステムボードを斜めに搭載することにより、空気の流れを最適化している。
(単に斜めに配置すれば良いというものではなく、様々なシミュレーションや解析を行い、最適な空気の流れを求めた一例である。個人でもPC間の配置を工夫したり空気の流れを考えて配置を最適化すれば冷却効率が上がる。)
また、メーカー製サーバなどでは内部にシュラウド(風導板)が設けられていることがある。これはFANの風を板に当てて空気の流れを生み出しより高い冷却効果をもたらす。
正しく設計されているシュラウドには空気の流れる速度を加速するために狭くなっている場所があります。この場所をベンチュリと呼び、ベンチュリ効果により空気の流速が上がります。
また、流速が上がると圧力が低下します。圧力が低下している場所に空気の取り込み口を設けるとエジェクタ効果により空気の流れる量が増えます。これによりより効果的に冷却することが出来ます。このエジェクタ効果は最新世代のメーカー製サーバやワークステーションに利用されています。(エジェクタ効果によりジェットエンジンの騒音を低減する研究も行なわれているため、うまく応用すればPCの騒音を少なくすることも可能と思われます。)
ソフトウェアの対策 †[edit]
- 稼働させる時間を設定する。
- ファンコントロール機能でファンの回転数を調整する。
- CPUの使用率や使用するコア数を低くする。
- Hyper-ThreadingをOFFにする。
- PC自体のパフォーマンスが低下するためあまりお勧めしません。並列処理性能が低下するのでOFFにするくらいならCPUのクロックを下げたほうが効率が良いと思われます。
- CPUの設定変更
- CPUの動作電圧を下げる(低電圧化)事で発熱を抑える事が出来ます。(※Offset電圧を調節すること)
- ただし、動作に最低限必要な電圧を下回る設定にすると動作が不安定になったりOS自体が止まるので注意が必要です。
- 正常に動いても、ごく稀にフリーズしたりPCが強制的に再起動するような場合は電圧が足りません。故障を疑う前に電圧を盛りましょう。
- CPUのクロックを下げることでも発熱を抑えることができます。
- 電源オプション内の詳細設定やUEFI BIOSから調節します。CPUのブースト機能をOFFにするという手もあります。
- 少し下げるだけで大きな効果が出ますが、ある程度下げるとクロック当たりの消費電力低下量が落ち着くので、パフォーマンスの低下を考えて程々(100~数百MHz程度、下げてもせいぜい1GHz程度)が良いでしょう(目安として2GHz台後半~3GHz台前半程度)。
- 電圧が増えると消費電力が急激に上昇します。UIFIで周波数あたりの電圧カーブを確認できる場合は、電圧が大きく上がる手前のクロック周波数がお勧めです。ただし、まだ発熱が問題ならもう少し下げてもいいです。
- PC自体のパフォーマンスが低下するため注意が必要です。
GPU(解析にCPUのみを使用している場合は無関係です) †[edit]
- GPUを使った解析を止める。
- Folding@homeの場合は、Configure→Slotでスロットを選択し下のEditをクリック→Extra slot optionsでName:pause-on-start、Value:Trueを追加すると、起動後もFoldボタンを押すまでそのスロットは解析を行いません。
- 下のやり方でPower Limitを最低まで下げても発熱が許容できない場合の最終手段です。
GPUの設定変更
- NVIDIA GPU(超簡単でも効果絶大 Power Limit設定編)
- MSI Afterburner等のツールでPower Limitを下げる事で大幅に電力効率を改善し発熱を抑える事が出来ます。効果が大きいのでおすすめ。
- Power Limitを下げて適用ボタンを押すだけです。電力制限を超えないようにGPUクロック周波数を自動で調整してくれるので、他は何も変えなくていいです。
- 若干ですが性能に影響があります。ゲームなどの3DCG用途の性能が気になる方は性能を考えて大体70%程度を下限として、70~80%程度に設定するのがお勧めです。
- 必要に応じて鎖アイコンをクリックしてPower LimitとTemp. Limitのリンクを解除します。
- 適用後はAfterburnerを終了しても問題ありませんが、再起動で設定がリセットされます。スキンによって場所が違いますがStartupボタン(Windowsアイコン)やApply overclocking at system startupをONにするとWindows起動時に設定が適用されます。(設定画面内の「Windowsと一緒に起動」と間違えないよう注意)
- 間違えて別のところを変えてしまっても、適用ボタンを押すまでは何も起こらないので安心しましょう。リセットボタンで元に戻せます。
- なお、Core Clockは下げる必要はありません。というのもCurve Editorボタンから電圧と周波数の関係を開くとわかりますが(ボタンがないスキンでもCtrl+Fで開くことができます)Core Clockを下げるとクロック当たりの電圧が上がる=電力効率が低下してしまうのです。
- NVIDIA GPU(更なる電力効率改善 電圧オフセット調整編)
- まだ電力効率を改善したい方へ。ここまで読んだ方はもうお気づきでしょう。Core Clockを上げる+Power Limitを下げるを同時に行うことで低電圧化ができます。
- なお、Curve Editorで確認すると少しクロックを上げただけでも同じ周波数での電圧が結構下がっています。数十MHz程度上げて様子を見たほうがいいかもしれません。
- クロックを上げる行為はオーバークロックとなり、保証外の行為となります。Power Limitの上限の範囲でクロックが調節されるのであまり問題は出ないはずですが、安全のために低めのPower Limitをかけておくことをお勧めします。
- (フル稼働で1時間程度動いたとしても、稀にフリーズしたり画面が暗転する場合は電圧が足りないのでクロックを下げましょう。)
- (おまけ)NVIDIA GPU(最大効率を叩き出す 電圧ロック編)
- 上の方法とは別に、電圧を手動で制限することができます。効率の悪い領域に入らないので電力効率を最大化できますが、設定が複雑で、最低電圧など低い電圧で固定すると性能への影響がさすがに大きいです。なお、ここまで書いておいてなんですが、演算処理は常に高い負荷がかかるため、基本的にPower Limitを最低まで下げたほうがより低い電圧・クロックになるのでこんな事をする意味がなかったりします。ただし、Power Limitの下限が高すぎるカードでは有用かもしれません。また、軽いゲーム等の3DCGなど比較的負荷が低い処理で高い電圧・クロックに入らないよう制限できる利点はあります。ゲーム目的なら性能が下がってしまうと本末転倒かもしれませんが。
- 以下は最低電圧に設定する場合の例です。
- まず設定を容易にするためにCore Clockを最低まで下げて適用ボタンを押します。
- Curve Editorボタンをクリック(またはCtrl+F)で電圧カーブを開きます。
- 最も電圧が低い点(一番左の点)を最も右側の点より高いクロックまでドラックしてからAfterburnerの決定ボタンを押します。(上げすぎないように注意)
- 電圧カーブが完全に水平にならない場合は、もう一度行います。まず、電圧カーブをShiftキーを押しながら下にドラックします。すると電圧カーブごと下に下げることができます。
- 再び同じように一番左の点が高くなるようにドラックします。
- 何度か繰り返していると電圧カーブが完全に水平になります。周波数を上げる必要がなければ電圧が上がることはないので、これで電圧カーブ左端の電圧が上限になりました。
- 最後に周波数を決定します。Shiftキーを押しながら元の一番左側のクロックと同じ程度までドラックします。このとき電圧カーブが崩れてしまう場合は手動で修正します。(限界まで詰める場合も元より数十MHz程度上に設定して様子を見るのがお勧め)元の周波数を忘れてしまったら適用してから保存ボタン→数字ボタンの順にクリックして保存した後、リセットボタンを押して確認しましょう。確認後は保存した数字ボタンを押すことで保存した設定を読み込むことができます。
- 最低電圧以外に設定する場合は同様の操作を行いながら固定したい電圧まで手動で電圧カーブを作成します。
- 電圧カーブを変更するとCore Clockは設定できなくなります。
- Power Limitは基本的に必要なくなる(設定によりますがPLが掛かるほど消費電力が上がらない)ので適当でいいです。(無設定でもいいですが適当に80%程度など)
- 適用ボタンを押した後、電圧上限が働いていることをGPU-Z等のツールを使用して確認してみましょう。なお無負荷時は電圧カーブの左端の電圧よりも更に低い電圧となっている点に留意しましょう。
- この場合も忘れずにApply overclocking at system startupボタンをONにしますが、あまりにも極端な設定(低すぎるクロックなど)だと再起動後に適用されずリセットされてしまうようです。
- (蛇足)Curve Editorで点をクリックしてLキーを押すと黄色い縦線が出現してその電圧とクロックで固定できますが、無負荷時のクロックも上昇してアイドル時の消費電力が上昇してしまうのであまりお勧めしません。
- (おまけ)NVIDIA GPU(消費電力を最小化 究極の設定)
- 電圧ロック+Power Limitを最小まで下げるを組み合わせることでPower Limitが効く負荷の高い処理では設定可能な電圧より低い電圧で動作し、Power Limitが効かない負荷の低い処理でも電圧・クロックが設定以上に上がらない究極の省電力設定になります。
- とは言え、低いクロック帯ではクロックあたりの電圧の上昇も穏やかです。電力効率の改善はあまり期待できないかもしれません。
- AMD GPU
- AMD GPUはCPU同様に電圧を下げるなど手動で細かな設定ができます。
- 電圧を下げすぎると、宿題の処理が停止したり、異常終了したりします。フル稼働で1時間程度動いたとしても、ごく稀に稀にフリーズしたり画面が暗転する場合は電圧が足りないので電圧を盛りましょう。
- GPUによっては、クロックを1割程度下げ、合わせて設定電圧を下げるだけで、宿題の処理時間に殆ど影響を与えず、消費電力を3/4に削減する等の対策も可能です(Radeon 5700XT;クロック1.9GHZ 電圧1.0V)。
- 適用後はAfterburnerを終了しても問題ありませんが、再起動で設定がリセットされます。スキンによって場所が違いますがStartupボタン(Windowsアイコン)やApply overclocking at system startupをONにするとWindows起動時に設定が適用されます。(設定画面内の「Windowsと一緒に起動」と間違えないよう注意)
- 共通
- ファンコントロール機能でGPUファンの回転数を調整することができます。ファンコントロールのみAfterburnerを起動していないと効果がないようなので、使用する場合は設定から「Windowsと一緒に起動」をONにしておきましょう。(画面が邪魔なら「最小化の状態で起動」もON、設定はタスクバーの通知領域から開くことになります)
- 使いにくい場合はAfterburnerのスキンを変えてみるといいかもしれません。
冷却は温度を測定することによってどれだけ効果が表れたかを評価するのが最もシンプルであろう。
PCの温度を計測する †[edit]
windows
- Core Temp CPU温度監視
- SpeedFan HDD、CPU、m/bの温度監視に加えファンコントロールできるソフト。(対応してない項目は-48℃とか表示される。項目はコンフィグで非表示にできる。)
これらのソフトで見られない場合はマザーボードのマニュアルを参照し、熱を出した後再起動してBIOS画面で確認する。
Linux
hddtemp HDDの温度を表示。
CPUの上限温度は各種CPUのTDP一覧の最大温度を参照。デスクトップは60度、ノートは80度以上だと大体ヤバイ。
- ケースをベランダなど汚してもいい所に出し、中の埃をエアダストクリーナー(PCショップで600円ほどで売ってる)で吹き飛ばす。ヒートシンクのギザギザやファンを重点的に。
- 掃除機でやると基板やファンを傷つける事があるのでお勧めしない。
- 冷却がうまく行われるように設計してあるメーカー製などのPCでも排熱口が壁やホコリで塞がっていると冷却効果が極端に低下するので定期的に点検しておくこと。
- わざわざ解体しなくてもマシンの廃熱口にたまったホコリを掃除機などで吸い取るだけでもだいぶよくなる
- 部屋の換気は基本。PCのある部屋に風が通るようにする。
- ノートの場合は底を浮かせて風通しの良いところに置く。
- PCケースの周りの空間を空ける。壁から離す。
- ACアダプタは発熱するのでケースから離す。必要の無いACアダプタはコンセントから外す。
- ルーターも発熱するので可能であれば離す。
- ディスプレイはこまめに切る。その他使用していない家電製品はこまめに切る。
- ケースの側板を外して扇風機で排熱する。
- 解析効率は下がるが、BOINC Manager で「Use no more than 〜 of the processor」の値を減らすか、Battle Encoder Shiraseを使ってCPU使用率を下げる。
冷却グッズを使った対策及び自作時の指針 †[edit]
保冷剤(など、室温以下の物体を当てて冷やすもの)は絶対につかうなよ!結露して壊れるからな!
デスクトップPC †[edit]
- CPUクーラーは素材に凝るよりヒートシンクやファンが大きいものが良い。高すぎるものはいらない。
- GPU系プロジェクトに参加せず、ゲームもしないのであればグラフィックカードはファンレスの物にする。
- オンボードGPUを使って消費電力を下げるのも手。使用目的や性能と相談。
- 逆にGPU系プロジェクトに参加する場合は一般ゲームの比ではない(業務用に近いレベル)負荷が掛かるので、ファンレスや静音性のみを謳う製品は避け、高性能クーラー搭載品を選ぶかツール等でファン回転数を上げること。
- 電源は供給電力の余裕のある製品を選ぶ。ギリギリの容量だと不効率な変換帯域で運用することになり、発熱やファン騒音の問題が発生する。大きすぎる電源は無駄という迷信もあるが、1000w級電源でも低負荷時の発熱が少ないモデルもある。
- ゲーマー向けケースのような、ファンの取り付け場所が多い・CPUやグラフィックカード周辺に余裕のある・メンテナンスしやすい製品を選ぶこと。
- ファンは闇雲に付ければ良いという物でもない。
- 「吸気量<排気量」とすると冷却は容易だが、ケース全体の隙間から吸気して集塵状態になるので設置場所によっては頻繁なメンテナンスが必要になる。
一方「吸気量>排気量」とすると吸気ファンのフィルタだけで容易に防塵できて管理は楽だが、熱溜まりができやすくセッティングには経験を要する。
- 「サイドパネルを開けると気流が乱れてむしろ温度が上がる」ほど最適化された状態が理想とされている。
- ノートPC用クーラーを使うと良い。それに加えてノートPC用に発売されている冷却シートを底面のホットスポットに貼ると尚良い。
- 詳細な情報はノートPC用クーラースレを参考のこと。落ちている場合はノートPC版で「ノートPC冷却」で検索。
PC機種別 ソフトウェアでの対応 †[edit]
導入のリスクは自己責任でお願いします。
- DELL Latitude & Inspiron シリーズの温度管理
- Windows系ではi8kfangui(英語)を導入する事で温度監視とパーツ温度毎のファン制御を設定出来ます。
- Linux系ではGkrellmという設定・表示ツールとi8kutilsというプラグインの組み合わせで上記i8kfanguiと似た制御が可能です。
Windows
Linux